をしきりに調べている。
 すると、タクマ少年が叫んだ。
「あ、金だ。黄金だ。ふうん、やっぱりそうだったんだよ、海溝には黄金があるという噂《うわさ》があったんだが、本当だった」
「えッ、これが金か? すごいなあ」
 僕は、土の流れの中からぴかぴか光るやつを、手に拾いあげて思わず大きな声を出した。


   悲願《ひがん》の黄金《おうごん》


 僕はタクマ少年の案内で、海溝の排水地区《はいすいちく》から、またもや動く道路に乗って下町へ向かった。
 僕は、動く道路の上にうずくまり、複雑な思いに渋い顔をしていた。
 金だった。黄金が海溝の底から掘り出されていたのだ。あんなにたくさんの量の黄金を見たのは始めてだ。すばらしい富だ。あれを使えば、いろいろなものが買えるだろう。僕は非常に興奮《こうふん》して来た。
 なんとかして、あの金を持って帰りたいものである。二十年前の世界――すなわち、現に僕が一人の生徒として住んでいる焼跡だらけの世界へ?
 それはむずかしいことだ。
 考えれば考えるほど、むずかしいことだ。二十年も前へ物を移すということは、二十|粁《キロ》後へ物をはこぶこととは違って、甚《はな
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