だのという心配は、絶対にしなくていいんです」
 タクマ少年の話を聞いているとたいへんうれしいやら、そしてまた僕自身の頭の古さが腹立たしいやらであった。
 だが、それにしても、僕は知ったかぶりをしてはよろしくないと思った。分らないことは何でも分るまで聞いておくがいいと思った。ことにこの案内人のタクマ少年と来たら、肩のところにかわいい羽根をかくしている天国の天使じゃないかと怪《あや》しまれるほどの純良《じゅんりょう》な無邪気《むじゃき》な子供だったから、僕は知らないことを知らないとして尋《たず》ねるのに、すこしも聞きにくいことはなかった。ただ、自分の頭の悪さに赤面《せきめん》することは、しばしばあった。
「さあお客さん。実物を見た方が早わかりがしますよ。あれをごらんなさい。ぐんぐんと向こうへ押し込まれていく不錆鋼《ふしょうこう》の長い桿《かん》[#ルビの「かん」は底本では「かく」](ビーム)をごらんなさい。あれが棚になる主要資材なんです」
 なるほど、巨人国で使うレールのような形をした鉄材が数十本、上下から互いに噛み合ったようになったまま、ぐんぐん壁の向こうへ入っていく。すさまじい力だ。原
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