うというのかね」
「それは分っていますよ。海溝のような大深海《だいしんかい》における資源を、一度に完全に、こっちのものにしようというんです」
「なんだか、とても大きなバクチの話を聞いているような気がするよ。――それで、その資源というと、どんなものかね。特別の掘出し物でもあるのかね」
「それはいろいろあるという話ですがね、中でもみんなの期待しているのは……」
 といいかけたとき、僕たちは急に明るい広々とした大造船所《だいぞうせんじょ》みたいなところへ出た。


   原子エンジン


 こんな大仕掛な造船所を、いまだ見たことがない。しかも地上にあるのならとにかく、海底の国にこんな造船所を設備して、いったい何になるのであろうかと、僕はふしぎに思いながら、そのすばらしい機械の動きに目をみはっていた。
「お客さん。今、ここから海溝へ棚をつきだしているのですよ」
 とタクマ少年はいった。
「もう一時間もすれば、予定の棚は全部出来上るそうです。棚が出来たところからは、更に下へ向かって柱をたてます。どんどん柱が立ったところで、それを横につらねて、堅固《けんご》な壁が出来ます。そうして一|区画《くかく
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