案内する海溝《かいこう》の棚工事《たなこうじ》のための専用道なんです」
海溝の棚工事? いったいそれはどんなことであろう。僕は、すぐ少年に聞きかえさずにいられなかった。
「海溝というのは、ご存でしょう。海の底が急に深く溝のようにえぐられているところです。こっちで一番有名なのは日本大海溝《にっぽんだいかいこう》です。その外にも海溝があります。――こんどの工事は、海溝の上に幅五キロ、深さ百キロの棚をつくり、その棚の先から下へ壁深さ五十キロのをおろし、そして中の海水を外へ追出してしまうのです。すると、それだけの海溝が乾あがってわれわれ人間が潜水服などを着ないで行けるようになります。ねえ、そういうわけでしょう」
「そういうわけには違いないが、そんな誇大妄想《こだいもうそう》のような大工事が、人間の手でやれるかい」
「この棚工事は、この海底|都《と》が始まって以来の新しい種類の工事なので、先例はないのですが、やってやれないことはないんだと、みんないっていますよ。しかしさすがに不安なところもあると見え、技師たちは念入りに工事計画をしらべていますよ」
「一体、そんな棚工事をして、どんな利益をあげよ
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