しく活発な魚群だった。
大海底の住民は、魚群なのだ。
その大海底が、ふしぎにも月光に照らし出されたように、はっきりと遠くまでが見えているのであった。あとで聞くと、これは海底全体に強い照明が行われているのだった。
「お客さん、分りましたか。向こうに見えるへんなものが何であるか、お分りですか」
僕はタクマ少年の声によって、びっくりして、吾《わ》れにかえった。
「ああ、そうだったね。何かへんなものが見えるだろうと、君はさっきからいっていたんだね。それはどこかね」
「あそこですよ。今、鯛《たい》の大群《たいぐん》が下りていった海藻《かいそう》の林のすぐ右ですよ」
「ああ、見える、見える、あれだね。なるほど、へんなものが丘の上にある。まるで傾《かたむ》いたお城のようだが、一体何だろう」
「分りませんか。よく見て下さい」
僕はそのお城が地震にあったようなふしぎなものをしばらくじっと見つめていた。そのうちに僕は、はたと思いあたった。
「分った。あれは沈没した軍艦じゃないか。ねえ君、そうだろう」
僕がふりかえると、タクマ少年は無言でうなずいてみせた。
「軍艦にしてはずいぶん大きい軍艦だね。形
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