い》


 僕は目を見はった。
 大きな硝子《ガラス》ばりの窓を通して、眼下にひらける広々とした雄大《ゆうだい》なる奇異《きい》な風景! それは、あたかも那須高原《なすこうげん》に立って大平原《だいへいげん》を見下ろしたのに似ていたが、それよりもずっとずっと雄大な風景であった。鼠色《ねずみいろ》の丘がいくつも重《かさ》なり合って起伏《きふく》している。それから空を摩《ま》するような林が、あちらこちらにも見える。
 と、その林がとつぜんゆらゆらと大きくゆれるのであった。すると林の中から、まっ黒な颶風《ぐふう》の雲のようなものが現われ、急行列車のようなすごいスピードで走る――と見えたは、よく見れば何千何万という魚群《ぎょぐん》なのであった。そしてうしろの林、これは、ポプラの木に似ているが実はそうではなく、大きな昆布《こんぶ》の林だということが分ってきた。
 雲のような魚群が、左から右からとぶっちがい、あるいはとつぜん空から舞い下りて来るように見えたり、あるいはまた急にすぐ前の硝子ばりの向こうを嵐のように過ぎて、まるでトンネルの中へ入ったようにしばらくは何にも見えなくなることもあった。すばら
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