しい。燈台の灯でもあろうか。かなり高いところにある。その菫色の燈火をめがけて、この動く螺旋形の道路は近づいていくようである。
「さあ、道路をとび越えますよ」
 庭の飛石を飛び越えるように、僕たちは高速道路から低速道路へと渡っていった。そして最後にぴょんと動かない歩道の上に立った。例の菫色の大燈火は、このときちょっと頭上にあった。よく見れば、それは天井についている大きな半球形の笠の中に入った電灯であり、その笠には「海中展望台」という五文字が、気のきいた字体で記されてあった。
「いよいよ来ましたよ。ここが、この町中で一番高いところです。ほら、この標柱《ひょうちゅう》をごらんなさい。『スミレ地区|深度基点《しんどきてん》〇メートル』と書いてあるでしょう」
 そういってタクマ少年は、そこに立っているおごそかな石碑《せきひ》のようなものを指した。
 なるほど、正《まさ》にそのとおりに記されている。
「スミレ地区の深度基点はここだというわけだね。スミレ地区というのは、この町のことかい」
「お客さんはスミレ地区へ見物に来ながら、ここがスミレ地区だということさえご存じなかったんですか」
 タクマ少年は
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