はすめやしません。しかし一番上へ行けば、海の中が見えますから、魚も見えるわけです」
「なんだか君のいうことは、ちんぷんかんぷんで、わけがわからないね」
と、僕はとうとう、さじをなげてしまった。
海中展望台
タクマ少年のいうとおりになって、僕はいくども動く道路をのりかえ、どんどんはこばれていった。
その途中には、トンネルがあったり、明るい商店街があったり、にぎやかなプールがあったり、動く道路の上にしゃがんでて遠くから黙って見ていても一向《いっこう》退屈《たいくつ》でなかった。この二十年後の世界の人々は、みんな幸福であるらしくたいへん明るく見え、そして元気に動いていた。
動く道路が、螺旋《らせん》のようにぐるぐるまわりをして、だんだん高いところへ登っていくのが分った。
「お客さま。目的地に近づきましたから、そろそろ下りる支度《したく》にかかりましょう」
タクマ少年は、僕の方をふりかえって、そういうと、腰をかけた僕も急いで腰をあげた。下りそこなっては一大事である。
うつくしい菫《すみれ》色の大きな星が空に輝いている――と思ったが、それはどうやら燈火《あかり》であるら
前へ
次へ
全184ページ中26ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング