今までに一度もなかったことだ。
人々の声は、カビ博士の名をよんで、その殊勲《しゅくん》をほめたたえる。博士は上気《じょうき》して、顔をまっ赤にしている。
意外なる待人《まちびと》
「おめでとう、カビ君。この手柄によって、君はこの次の市長に選挙せられるだろう。しっかりやって来たまえ」
僕は博士の肩をうしろから叩いて、そういった。
博士は、くるりとうしろをふりかえって、片目をふさいで頭を振った。
(そうじゃない。みんな君の手柄なんだ)
という意味をこめているのだ。
「これから君もいっしょに来て、わしを例のとおり助けてくれるだろうな」
「もちろんだ。僕はこの機会に、徹底的にトロ族を研究し、そして彼らのために幸福な安住《あんじゅう》のできる国を建設してやりたいと思っているんだ」
「おお、万歳《ばんざい》。それだ、君はこんどこそ表面に立って仕事をするのだ。わしは君のことについて、いずれ市民にすっかり本当のことを話をするつもりだ」
「不正入国の影の人間だということもか」
「しいッ。……大きな声を出してはいけない。わしも同罪《どうざい》になるおそれがある。それは隠《かく》してお
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