も知ったかぶりで、じゃんじゃんものをいう方がいいと思った。
でないと、もしもこの僕が時間器械を使ってこの町へもぐりこんだ怪しい客だと知れたときには、この老ボーイを始めホテルの支配人以下[#「以下」は底本では「以外」]は大憤慨《だいふんがい》をして、僕を外へ放りだすことであろう。そのあとは更に悪化して、僕は警察のごやっかいになるかもしれない。そんなことがない方がいい。だから出来るだけ僕は落着きはらっていなければならない。そして何でも心得ているような顔をしていなければならないのだ。
「お帽子と御オーバー?」
老ボーイはふしぎそうに僕の顔を見返した。
「はて、そんなものはここにはございませんが、もし特に御入用《ごいりよう》でございましたら、早速《さっそく》博物館へテレビジョン電話をかけまして、旦那さまのお好みのものを貸出してもらうことにいたしましょう」
僕はそれを聞いてびっくりした。博物館から帽子やオーバーを借出さねばならぬとは一体何事であろうか。帽子店や洋服店はないのであろうか。――いや待てよ。帽子やオーバーがそれほど古くさいものなら、それをかぶったり着たりして歩いては、皆に笑われる
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