につれ、空間のうす桃色の大きな波と見えたのは例の魚人《ぎょじん》トロ族がおびただしくこの洞窟《どうくつ》みたいな中に充満《じゅうまん》し、そして彼らは僕をもっとよく見たがって、たがいにひしめきあっているのだと分った。
 その醜怪なる魚人のかたち! 僕は嘔吐《おうと》しそうになって、やっとそれをこらえた。
 ひしめきあう魚人たちは、急にしずかになった。誰かが号令《ごうれい》をかけたようでもある。
 そのとき僕の耳もとで、僕に分かる言葉がささやかれた。
「君の兜をぬぎたまえ。君の服もぬぎたまえ。そうしても君は、楽に呼吸ができるよ。ここには十分の空気があるからね」
 僕は横をふりむいた。するとそこには見おぼえのある魚人がいた。はじめ海底で会見したときに、僕にものをいいかけた彼だった。彼は乳の上に、黒いあざをこしらえていた。そのあざは、彼のからだが或る方向になったときにかぎり、雄鶏《おんどり》[#「雄鶏」は底本では「鶏鶏」]のシルエットに見えた。僕は彼のことを、これからオンドリと呼ぼう。
「いや、僕はぬぐつもりはない。このままがいいのだ」
 僕は断固《だんこ》として、ことわった。うっかりぬいで
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