じゃなくって」
「そりゃね、いくぶんそれは認められるけれど……」
「ああ、なんてしみったれな仰有《おっしゃ》り様《よう》でしょうか。これだけ明らかなことを、しぶしぶ認めるなんてフェア・プレイじゃないわ」
「だがね、とにかくこの実験動物は一度|溺死《できし》してしまったんだ。だから、そう大きなことは、いえないわけだ」
「あなたは頭が悪いのね。そういう難癖《なんくせ》のつけ方は、何といってもフェアじゃないわ」
「まあ、そういうなら、それでもいいということにして、僕はもっとくりかえし、この実験を続けることを提議《ていぎ》しますね」
「それはもちろんあたしも同感ですわ」
僕は急に目がまわりだした。僕の頭の上で、があがあ口論をやっているのは、男大学生のトビと女大学生のダリア嬢にちがいない。かねてこの御両人は熱心に人体に残る平衡器官の研究をすすめていたわけだが、両者の説は対立していて正しいか然《しか》らざるか判定がつかないので、遂に両人は僕をホテルのベッドから盗み出して、かの水槽へ入れ、魚のような目にあわしたのに違いない。その揚句《あげく》、乱暴にも僕を溺死させたが、まだそれにあきたらないで僕を
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