《ししん》のようなものが並んでついていた。
辻ヶ谷君は、その器械の横についている小さい汽船の舵輪《だりん》のようなものにとりついて両手を器用にうごかし、からんからんと輪をまわした。すると器械の壁が、計器の下のところで引戸のように横にうごくと、そこに人の入れるほどの穴があいた。
「本間君。その中へ君は入るんだよ」
「えっ、この中へ……」
「そうだ。それが時間器械なのだ。それはタイム・マシーンとも航時機《こうじき》ともいうがね、君がその中に入ると、僕は外から君を未来の世界へ送ってあげるよ。君は、何年後の世界を見物したいかね。百年後かね、千年後かね」
百年後? 千年後? 僕はそんな遠い先のことを見たいとは思わない。そんな先のことを見てびっくりして気が変になったらたいへんである。それよりはわりあい近くの未来の世の中が、どうなっているか見たいものである。僕は考えた末、辻ヶ谷君にいった。
「二十年後の世界を見たいんだ」
「二十年後か。よろしい。じゃあ入口の戸をしめるぞ。じゃあ、よく見物して来たまえ、さよなら」
「あ、辻ヶ谷君。一時間たったら、今の世界へもどしてくれたまえね」
僕はそういったが
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