が昨夜貫一が撃って右脚を砕いた刑事と同一人だったとしたら、どんなに幸運に考えても足をひきそうなものであったが、彼はすこしもそんな風に見えなかったのである。もっとも、よく考えてみれば、右脚を失った人間が、その翌晩平気な顔をして煙草の火を借りに出て来られるものか来られないものか、すぐ分ることであった。
夢徳寺《むとくじ》から弥勒菩薩《みろくぼさつ》の金像を背負って出で来た貫一の行手に、またもや縞馬姿の刑事が立ち塞《ふさが》ったのには、さすがの貫一もぞっとした。毎晩の如く現われて尽きる模様もない刑事の執念《しゅうねん》――というか、徹底した警戒ぶりに、貫一は日頃の自信が崩れ出したのを認めないわけに行かなかった。
「よくも毎晩のように邪魔をしやがる。くそッ、これを喰え」
ピストルは一発、発射された。
それは見事に刑事の左脚に命中し、太腿《ふともも》のところから千切ってしまった。貫一の使っているのは特殊な破壊弾であったから、こんな工合に恐ろしい破壊力を発揮するのであった。
貫一は仏像を背負ったまま、今夜は倒れた刑事の方へ近づいた。月光の下に展開する凄惨《せいさん》な光景。
「間違いなく、
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