秘仏が並んだ。烏啼は、やはりちょっぴりと貫一を賞め、そして「何か変ったことはなかったか」と訊《き》いた。貫一は異状なしと嘘をついた。
 その次の第三夜は、葛飾へ出掛けた。
 二度あることは三度あるというが、ふしぎにも同じことがあった。縞馬みたいな刑事が煙草の火を借りに来て、この辺は物騒だから要慎《ようじん》するように注意して去った。
「どうも変なことがあればあるものだ。毎晩同じような服装をした同じような刑事が現われて来やがる。……しかしまさか同じ人間じゃあるまいな。前の夜の刑事なら、あんなにぴんぴんしていられる訳がない。それに同じ刑事なら、煙草の火を借りるにしても、もっと何か前夜と連絡のあるような文句をいう筈だが、実際はそんなことはなかったんだからなあ。だから、やっぱり別の人間に違いない」
 その夜仕事が終って寺を抜け出て通りへ出た途端《とたん》に、またもや約束事のように、刑事がとび出して仏像を背負った貫一を後から呼び留めた。
「これでも喰《くら》え」
 貫一の放った一弾は、刑事の右の脚を、膝の上のあたりで切断をしてしまった。刑事は、すってんころりと転んだが、気丈夫な奴と見えて匐《は》
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