に、近所が物騒なことを告げて、向こうへ行ってしまった。昨夜と同じようだ。近頃の刑事というのは皆あんな服装をし、あんなことをいうように命令されているのだろうか。
それから二十分後に、貫一は琥珀寺の秘仏である吉祥天女像を、荒ごもに巻いて背中に背負い、寺を出た、その寺では、坊主たちが気がついて騒ぎだしたが、貫一がピストルをポケットから出すと一同は温和《おとな》しくなり、貫一のいうことを聞いて一同は便所の中に本当の雪隠詰《せっちんづ》めとなった。
貫一はその後で、便所の戸を釘づけにし、そして悠々と吉祥天女像を荷造して背負って寺を立ち出たのであった。
と、だしぬけに「待て、賊!」と声をかけて、こちらへ駆けて来る者があった。月明かりに見れば、又しても例の変ったユニフォームを着た刑事だった。
銃声一発! 刑事は蝙蝠《こうもり》のような恰好をして道路上に倒れたが、そのとき刑事の左腕が切断して宙にとぶのが見られた。
貫一は、そのまま走り去った。前夜と同じことが続くとは、なかなか油断出来ない世の中になったものだわいと、彼は烏啼の館へ帰着するまで全身の緊張を解かなかった。
地下の倉庫には、二体の
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