、地下の特別倉庫へ安置せられた。
「うまくやったのう」烏啼がちょっぴり賞めた。「何か変ったことはなかったか」
「いいえ、なんにも……」
 と貫一は刑事の件については語らなかった。


   油断《ゆだん》なき警戒


 第一夜の成功に味をしめて、貫一は第二夜を迎えると、予定のとおり品川の琥珀寺へ出掛けた。
 やっぱり空には戸鎌のような月が出ていて、貫一がやった昨夜の仕事を知っているぞという風に見えた。
 お寺は海端《うみばた》にあった。松の木の根元で煙草を吸いつけていると、引揚げられた舟の蔭から一人の男が立現われて、貫一に火を貸してくれといった。その男を見て貫一は愕《おどろ》いた。派手な毛糸を縞に編んだセーターを着、チョコレート色のズボンをはいた男だった。顔は大きく、頭の上に乗っている鳥打帽はいやに小さく、昨夜の刑事にたいへん似ているが、真逆《まさか》あの刑事ではあるまい。あの刑事なら右腕をつけ根のところから千切《ちぎ》られて、今頃は蒼い顔をして三途《さんず》の川を歩いている筈だった。――が、それにしても、声音《こわね》が似ているので、貫一はぞっとした。
 刑事は、自らそれを名乗ると共
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