は素晴らしい着想だ。遉《さすが》に烏啼天狗専門店の名探偵袋猫々先生だけのことはある」
「叱《し》ッ。大きな声はいけません。……よろしいか、この事は大秘密ですぞ」
3
さて十一月十一日の当日、苅谷邸は警官隊で取囲み、ものものしい警戒ぶりであった。
だが時刻は移っても、怪しい者の姿は一向現われず、見張りの者は少々待ち疲れの態《てい》であった。すると正午のちょっと前、警察の自動車が、一台、表についた。中から現われたのは警視で、二人の警部補を随《したが》えていた。
「やあ。ご苦労じゃ。まだ賊は現われんかね」
「はい。どういうわけか、まだ現われません」
「もう現われる頃じゃ、警戒厳重にな」
「はい」
「苅谷氏に会ってみたい。案内してくれんか」
「はい。どうぞこちらへ……」
警視と苅谷一家との会見は、頗《すこぶ》る風変りなものだった。警視は、苅谷夫妻に両手をあげるようにお願いし、室内にいる警官たちにも同様の姿勢をとるように強要した。そうして置いて警視の一行は、苅谷夫人繭子の頭から毛布を被《かぶ》せ、玄関先に待たせておいた自動車で搬《はこ》び去ったのである。玄関先にも警官隊が
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