ブ・ニッポン・スッパ・エンド・オシコミ」に記載せられ、会員及び広く被害性大衆に一大感動を与えたことだった。この記事を読んで会員の一人である掏摸与太郎は慨歎した。「するてえと、電車の中で五百円紙幣を稼ぐためには、おいらは背中にチョコレートの入った大きな包を背負って電車に乗込まなきゃならねえぞ。こいつはどうも不便なこった!」
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闇成金の苅谷勘一郎氏の許へ、その朝恐るべき脅迫状《きょうはくじょう》が舞いこんだ。
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“脅迫状。拝啓、来る十一月十一日を期し、貴殿夫人|繭子《まゆこ》どのを誘拐《ゆうかい》いたすべく候間お渡し下されたく、万一それに応ぜざるときは貴殿は不愉快なる目に遭《あ》うべく候。右念のため。草々敬具。烏啼天狗生拝”
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まことに念入りな鄭重《ていちょう》慇懃《いんぎん》を極《きわ》めた脅迫状であった。しかしいくら鄭重慇懃でも、脅迫状は嬉しくない。受取人の苅谷勘一郎は焦慮《しょうりょ》熟考《じゅっこう》の末、一つの成案を得た。
(こういう事件は、警察へ話すよりも、先ず袋猫々探偵に相談した方がいい。あの探偵なら、烏啼
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