を満足すべき内容を持って辿《たど》って行った。そしてその復習が遂に終りのところまで来たとき、彼は電話の呼鈴の鳴るのを耳にした。
「はあ、もしもし……」
 こういうときの用にと、傍のボタンを押しただけで、壁の中から電話器が飛び出して来る仕掛になっていた。
「こちらは苅谷ですがね」さっき別れて来た苅谷氏の声が聞えた、何だか笑いを含んだ声に聞える。
「うちの家内の告白したとこによりますとね、家内は三日間に亘り、あなたの事務所に起伏していましたが、その間ずっとかの憎むべき烏啼天狗と一緒だったといいますよ。これは先生もご存じないことなんでしょうね」
「ふうん。それは意外……」
 探偵猫々は唸《うな》る外なかった。
「その間烏啼と何をしていたかといいますと、彼烏啼は家内からポテト料理の講習を受けていたんだといいます。家内と来たらポテト料理にかけては素敵な腕を持っていますからね。ポテトが大好物の烏啼がこの企《くわだ》てをするのはもっともなことで、どちらかというと遅すぎる位のものです。で、家内は最後の日には烏啼にポテト講習の免状を授けていたんだといいます。それからですね、これは言うまでもないことですが
前へ 次へ
全17ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング