喰《く》いしばって、喜びの色を押し隠したのだった。


     8


 弦吾の先走りしたチェックとは別に、先ず「フィナーレ」が開いて、たしかに例の義眼女を発見することが出来た。プログラムの上に※[#丸2、1−13−2]と印をつけた。第二回目の登場という意味であった。
 弦吾には、もう幕間《まくあい》もなんにもなかった。唯《ただ》機の至るのが待ちあぐまれるばかりだった。「弥次喜多《やじきた》」が始まって、第一景。一座を率《ひき》いる丸木花作《まるきはなさく》と鴨川布助《かもがわぬのすけ》とが散々《さんざん》観客を笑わせて置いて、定紋《じょうもん》うった幕の内へ入った。
 いよいよ第二景。紅黄世子かどうか判ろうという機会が来たのだ。流石《さすが》に胸が迫った。道頓堀《どうとんぼり》行進曲も賑《にぎや》かに、花道からズラリと六人[#「六人」は底本では「八人」]の振袖《ふりそで》美しい舞妓《まいこ》が現れた!
(居ない、居ないぞ)
 QX30[#「30」は縦中横]は軽い吐息《といき》をした。
 それからプログラムは進む。第四景には、残る柳ちどり[#「柳ちどり」に丸傍点]と海原真帆子[#「海
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