間諜座事件
海野十三

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)其《そ》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)公衆電話|傍《そば》ニ

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#丸1、1−13−1]
−−

     1


 これは或るスパイ事件だ。
 ところで、これから述べてゆく其《そ》の物語の中には、日本人の名前ばかりが、ズラズラと出てくるのだが、読者諸君は、それ等を悉《ことごと》く真《しん》の日本人だと早合点《はやがてん》されてはいけない。実はその間諜《かんちょう》一味は××人なのである。本来ならば「丸木花作《まるきはなさく》事《こと》本名《ほんみょう》張学霖《ちょうがくりん》は……」といった風に書くのが本当なのであるが、それを一々書くのが、煩《わずらわ》しい程、××人が出てくることであるから、一つ思切《おもいき》って、味噌も糞も悉く日本人名前の方だけを書くことにした。
 どうかお読みになっている裡《うち》に、錯覚《さっかく》を起さないよ
次へ
全28ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング