う》)
 が始まった。赤と白とのだんだらの玩具《おもちゃ》の兵隊の服を着、頬っぺたには大きな日の丸をメイク・アップした可愛《かわ》いい十人の踊り子が、五人ずつ舞台の両方から現れた。
 タッタラッタ、ラッタッタッ。
 ラッタラッタ、タッタララ。
 踊り子たちは、恰《あたか》も木製の人形であるかのようにギゴチなく手足を振った。
(おお、このなかに、義眼を入れた女が居るか?)
 眼を見張ったが、こう遠くては判らない。と云って今さら舞台の前のカブリツキまで出られないし、たとい出てみたところで何しろ小さい眼のことだ。義眼と判るとまで行くまい。
 QX30[#「30」は縦中横]の笹枝弦吾《ささえだげんご》は、呆然《ぼうぜん》として舞台の上に踊る彼女達を見入った。
 そのとき彼の眼底《まなぞこ》に映った一人の踊り子があった。その踊り子は、他の九人と同じように調子を揃えて踊っているのであるが、何だかすこし様子が変である。
 どう変なのかと、尚《なお》も仔細《しさい》に観察をしていると、成程《なるほど》一つのおかしいことがある!
 その踊り子は頭を左右に、稍《やや》振《ふ》りすぎる嫌いがあるのだ。
 い
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