洞《うつろ》になろうとする。
――いつの間にやら、第三コメディ「砂丘《さきゅう》の家」は幕となった。弦吾は同志帆立に脇腹《わきばら》を突つかれて、慌《あわ》てて舞台へ拍手を送った。途端《とたん》に、
「おや?」
弦吾は、なにかしらハッとした。霊感《れいかん》の迸《ほとばし》り出でようという気配《けはい》を感じた――子供のときから、不思議な癖《くせ》で……。
(そうだ。あの消去法《しょうきょほう》という数学、あれを応用して一つやってみよう、よし!)
彼は遂《つい》に一つのプランを思いついた。頭脳は俄《にわ》かに冷静となった。科学者だった彼の真面目《しんめんもく》が躍如《やくじょ》として甦《よみがえ》った。消去法とは一体どんな数学であるか。
そのときベルが、喧《けたたま》しく鳴った。ジャズに囃《はや》されて重い緞帳《どんちょう》が上っていった。いよいよ第四の「ダンス・エ・シャンソン」の幕が開いたのだった。
何よりも先ず第一の問題は、誰が義眼を入れているかを発見することだった。
舞台では、飛び上るようなメロディーにつれて七曲の第一、
ダンス(木製《もくせい》の人形《にんぎょ
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