別人のような態度で、恰《あたか》も命令するかのように、
「さあ、これからあたしと一緒に行くのよ。あたしのうちに行って、そしてあたしの奪われているものを、貴郎《あなた》に手伝ってもらって取返すのよ。そしてあたしは、どうしても貴郎から離れないようになるのよ。さあ行ってよ、早く――」
 杜はミチミの意外な力に引張られて、やがて家を後にした。
 ミチミは道々、杜にくどくどと説いた。
 ミチミがどうしても有坂――長髪の青年のこと――から離れられないわけは、彼のためにミチミの所有になる或る重大なる秘密物品が有坂の手によって保管されていることだ。それを取戻さない限り、有坂の許を離れるわけにはゆかない事情がある。有坂の手から、ぜひそれを取返さなければならないが、その品物は彼女のバラックの屋根の下にある一つの壊れた井戸の中に、大きな石に結びつけて綱によって垂らしてある。ミチミの手では、この重い石をどうしても引上げられないから、今夜杜に手伝って貰いたい。――というのである。
 杜は承知の旨《むね》を応《こた》えた。


     12[#「12」は縦中横]


 ミチミの住居《すまい》は、隅田川の同じ東岸
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