ですわ、あんまりですわ。――」
 ミチミは子供のように声をあげて、その場に泣き伏した。
 杜は、曾《かつ》て知っていたミチミとは別の成熟した若い女が、彼の前で白い頸を見せ、肩を慄《ふる》わせて泣いているように思った。それはなんとはなく、彼の心に或る種の快感を与えるのであった。
 ミチミは、泣き足りてか、やがて静かに身体を起した。両の袂を顔の前にあて、その上から腫《は》れぼったい瞼を開くような開かないようにして、杜の方を見た。
「――覚えてらっしゃい」
 ミチミは、たった一言云って、膝を立てて立ち上ろうとした。しかし彼女はヨロヨロとして畳の上に膝をついた。
「ウム、――」
 そのとき杜は、不思議なものを見た。ミチミの白い脛《すね》の上から赤い糸のようなものがスーっと垂れ下ってきて、脛を伝わって、やがてスーっと踝《くるぶし》のうしろに隠れてしまった。血、血だ!
 見れば畳の上にも、ポツンと赤い血の滴りが滾《こぼ》れているではないか。杜はドキンとした。
「おい、ミチミ待て――」
 ミチミはそれが聞えぬらしく、外へ出てゆきかけたが、何を思ったか、また引返してきて、杜の前に突立った。そしてまるで
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