けて坊主になり、幹だけ残った大樹があった。そこに人間が青い脚をブランとして垂れて下っているのであった。それが暁の光を浴びて、なんとなく神々《こうごう》しい姿に見えた。――お千が死んでいる。
 杜は、わりあいに愕かなかった。ただしそれはほんの最初のうちだけであったけれど。
「お千が死んでいる。――お千はなぜ死んだのであろう?」
 杜は裏口に立って、ボンヤリ死体を見上げていた。
 よくよく見ていると、お千の首にまきついている縄は、焼けた大樹の地上から八、九尺もある木の股のところに懸っていた。縄はそこでお仕舞いになってはいず、股のところから大樹の向う側にずっと長く斜に引き張られているのではないか。縄の末端は、大樹の向う三間ほど先にある手水鉢《ちょうずばち》の台のような飛び出た巌《いわお》の胸中に固く縛りつけられてあった。
「ああ、これは自殺じゃないんだ!」
 杜はハッと顔色をかえた。
 自殺の縊死《いし》だと思っていたのが、縄の引っ張ってある具合から、これは他殺でないと出来ないことだと気がついた彼はにわかに恐怖を感じた。お千は殺されたのだ。疑いなく彼女は暴力によって此処に釣り下げられたのであ
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