ただ彼は、枕許《まくらもと》に近い土間の上に、昨夜発見しなかったものを見出した。いや、それは発見はしたのであろうがつい気がつかなかったのであろう。それは見慣れない莨《たばこ》の吸《す》い殻《がら》だった。――その莨は「敷島!」
杜は「ゴールデンバット」ばかり吸っていた。敷島は絶対に吸わなかった。お千も吸わない。
「敷島」の吸殻は三つほどあった。取りあげてみるとそこへ捨てて間もないように見えるものだった。
もう一つの「敷島」の吸殻を発見した。それは土間の中に堅く埋まっていた。土間の上はなにかを引摺ったように縦の方向に何本もの条溝《すじ》がついていた。いま発見した吸殻はその下に埋まっていたのである。
土間の上の何本もの条溝は何のためについたのであろう。今朝がたは、こんなものを見なかったことは確かだ。
杜はこの条溝の伸びている方向に目をやった。その条溝は裏口の幕の下に続いて、まだそこから外に伸びているようであった。杜はそれをボンヤリ見つめていたが、そのうち起き上って土間に下り、裏口の幕を掻き分《わ》けて何気なく外を見た。
そのとき彼は、実に不思議な光景を見た。
裏口の正面に、焼
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