えっ、赤見沢博士が昏睡状態《こんすいじょうたい》から覚《さ》めたというか。そして君は博士に会って話をして来たって?」
「そうなんです。その結果、いろいろと分って来ましたよ。第一に、博士はあの晩、只《ただ》の鞄の中に、例のお化け鞄――つまり重力消去装置の仕掛けてある立派な把柄のついている鞄を入れて、電車に乗ったんだそうです。決して角材《かくざい》や古新聞紙は入れなかったといいます。つまり賊は、博士の鞄とそっくりの鞄を用意し、その中に角材を入れて、二重鞄と同じ位の重量とし、博士の鞄と掏《す》りかえるつもりだったらしい。博士は言明《げんめい》しています、自分が座席に座っていると、よく似た鞄を持った乗客が近寄って来て、博士の前に立ったそうです」
「そやつが怪しい!」
「そうです。誰が聞いても怪しい奴《やつ》ですが、そのとき博士は大いに要慎《ようじん》して、自分の持っている鞄を奪《うば》われまいとして、一生懸命|抱《かか》えこんだそうです。すると怪しい乗客の連《つ》れである若い女が博士の方へ身体をおっかぶせるようにのしかかって来て、女の膝《ひざ》が博士の膝を強く押した、すると急に博士は気が遠くな
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