所には、三本足の黒い烏《からす》の絵が書いてあった」
「何という、三本足の黒い烏の絵が?」
と、課長は驚愕《きょうがく》の色を隠《かく》しもせずに叫んだ。
「どうした課長。烏の絵になぜそんなに愕《おどろ》くのか。一体[#「一体」は底本では「体」]それは誰のことなんだ」
目賀野はいい気になって反問《はんもん》した。
「それは恐《おそ》るべき賊《ぞく》のしるしだ。烏啼天駆《うていてんく》という怪賊があるが知っているかね」
「ああ、怪賊烏啼か。烏啼のことなら聞いたことがあるが、若いくせに神出鬼没《しんしゅつきぼつ》の悪漢だってね。一体どんな顔をしているのかな、その烏啼というやつは……」
「それがよく分らない。烏啼と名乗《なの》る彼に会った者は誰もない。しかし脅迫状《きょうはくじょう》などで、烏啼天駆の名は誰にも知れ亙《わた》っている」
「捜査課長ともあろう者が、そんなぼやぼやしたことで、御用が勤《つと》まると思うのか」
「何をいう。いい気になって……」
課長は目賀野を元の留置場《りゅうちじょう》へ戻した。
怪賊《かいぞく》烏啼《うてい》
そのあとで課長は溜息《ためいき》
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