射線計数管と――妙なのが靴の中に収《しま》ってある?)と、帆村は首をひねった。田鍋課長には、そんなことは分らないので、どうしてあんなものを靴の中に入れてあるのか、あれでは足が入るまいなどと、そんなことばかりを心配していた。
小山嬢は、靴を手にぶら下げた。そして指をしきりに動かして、計数管と無電装置との間に連絡のあることを示したのち、靴をいじっていたが、靴のフックのところに突然赤い豆電球がついた。
すると、殆んど同時に、靴の底から熊手《くまで》のようなものがとび出して、下に向って開いた。その恰好は、がんじきをつけた雪靴にどこか似ていた。その熊手|様《よう》のものは、蟹《かに》のように爪をひろげ、びくびく慄《ふる》えていたが、そのうちにその爪がだんだん内側へ曲って来て、遂《つい》には靴の下で何物かをがっちりと抱きしめたような恰好となった。
小山嬢は、そうなった靴をしきりにさしあげて、美貌の青年の注意を喚起《かんき》している風に見えた。すると青年は感激の面持《おももち》で、つと小山嬢の方に寄ると、靴もろとも両手でぐっと抱きしめた。青年の腕の下にある小山嬢の顔が、急に蒼《あお》くなり、そ
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