ころへ持っていって、靴をはかせるような恰好《かっこう》をしてみせ、それから靴をまた台の上へ置いた。博士にその靴をはかせるつもりらしいが、ズボンだけで足のない博士が、どうしてそんな重い靴をはくことが出来るだろうかと、田鍋課長は気がかりであった。
小山嬢は、その靴を指して、美貌の青年の顔を見上げた。青年は肯《うなず》いた。小山嬢は靴の中をあけて見せた。中には何やら詰まっていた。それは何かの小型の器械であるらしく、小さい部分品が組合わせられていた。そんなものが入っていては、靴の中に足を突込むことが出来ないではないかと、田鍋課長は更《さら》に気がかりになった。
小山嬢の指は敏捷《びんしょう》に動いて、その部分品を一々指した。彼女はそれについて説明しているらしいが言葉はさっぱり分らない。しかし帆村は、その小型器械が、無電装置であることに気がついた。
小山嬢は、もう一つの靴の中からも、別の器械を取出した。その器械は、著しい特徴があるので、帆村にはすぐ分った。それは放射能《ほうしゃのう》物質から出る放射線を捕えて、その放射線の強さを検出する計数管《けいすうかん》の装置であった。
(無電装置と放
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