、窓の一つからすこし灯《ひ》が洩《も》れているので、一同はそれを目当《めあ》てにしてその窓下へ身をひそめたわけである。
ジイイイ……と、妙な音が、室内にしている。
中を覗《のぞ》こうとしたが、窓が高い。
そこで田鍋の部下二名が台の代りになり、帆村と課長を肩車に乗せた。この珍妙《ちんみょう》な形でもって、透間《すきま》を通して窓の中を覗いた。
カーテンの隙間から、室内の模様をうかがうことが出来た。
「おやア……」
「あッ」
帆村も田鍋課長も、思わず愕《おどろ》きの声を発して、あわててあとの声をのみこんだ。
室内には、まことにふしぎな光景が展開していた。
その部屋は、赤見沢博士の研究室の一つで、多数の器具機械がごたごたと並んでいた。そしてそこに三人の人物が居た。
そのうちの一人は、助手の小山すみれ女史であって、彼女がそこに居ることには格別《かくべつ》愕きはしない。
もう一人は、若い男であった。かなり背の高い、立派な顔立の青年であって、にこやかな笑いをたたえて、小山すみれの方を見つめている。
この男の顔を見て愕いたのは帆村荘六ではなく、田鍋課長であった。
(はてな。この女
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