服《せっぷく》にかかった。
「杉の角材の中に仕掛があるというのか。それはどうも信ぜられないね。しかし念のためだ、調べてみろ」
目賀野は臼井を督励《とくれい》して、四本の杉の角材を手にとるやら耳のところまで振ってみるやら、それから目方を考えてみるやらして、さまざまな診察を試みたが、その結果は、杉の角材であるという以外の化物ではなさそうであった。
「貴様のいうことは出鱈目《でたらめ》だ」
目賀野は再び激昂《げきこう》に顔を赭《あか》くし始めた。
「待って下さい。博士の仕掛は、この角材の中にしっかり入っているんでしょうから、この角材を鉈《なた》で割ってみましょう」
臼井は、部屋の隅の函《はこ》の中から鉈を出して来て、角材をぽかりと縦《たて》に二つに割った。それから中を調べた。が、それは杉の角材であるに十分であったが、他の何物をも隠していなかった。
臼井は、次々に残りの角材をぽかりぽかりと割ってみた。すべては、只の角材であるという以外に、何の新発見もなかった。
「それ見ろ。なんにもないじゃないか。貴様は恩知らずだ。底の知れない鈍物《どんぶつ》だ。ああ貴様のような奴は、もうわしのところへ
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