用意された。
気のきいた子供がいて、蚊取線香《かとりせんこう》を持って来たので、これは骸骨館係へわたされた。しかし骸骨館の中は意外にも蚊がいなかった。附近に水たまりが全然ないせいであろう。
ようやく日が暮れた。が、西の空に三日月が淡《あわ》い光を投げていた。
胆だめし当番の順序がきまった。
第一番は正太君であった。
がらんがらんがらん。これが三度鳴った。骸骨館の用意はできあがったという知らせであった。
「よし、では僕が一番に探検してくるぞ」
「することを忘れちゃだめだよ。中へ入ったら鉦《かね》を叩いて、ううっと呻《うな》って、それから縄をひっぱってさ、それから壁に名前をかいてくるんだ。さあ、この白墨を持っていきな」
「ああ、わかったよ。では諸君、さよなら」
「なにか遺言《ゆいごん》はない?」
「遺言?」
「だって正大君。君は骸骨を見たとたんにびっくりして死んじまうかもしれないからね。何か遺言していったらどうだ」
「ばかをいってら。誰がそんなことで死ぬもんか。僕の方が骸骨を俘虜《ふりょ》にしてお土産《みやげ》に持って来てやるよ」
勇ましいことばを残して正太君はへいの破れ目を越
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