えて構内へ入った。南瓜畑《かぼちやばたけ》の中を腰のあたりまでかくしてかさかさと音をさせながら前進して行く。廃屋《はいおく》の一つを越え、さらにもう一つの廃屋を通りすぎる。だんだんさびしさが増し、神経がいやにとんがる。もう一つの廃工場のわきをぬける。いよいよ骸骨館が目の前にあった。うすい月光をあびて、アルコール漬けの臓器《ぞうき》のように灰色だ。
まん中のくぐり戸のところだけが、魔物《まもの》が口をあいているようにまっ黒だ。正太はあそこから中へ入らなければならないのだと思ったら、とたんにこわくなって引返そうかと思った。
だが、そんなことをしては、みんなからいつまでもけいべつされるばかりだから、そこで力をへそのあたりへうんと入れ、死んだつもりになってくぐり戸へ近づいた。「地獄の一丁目入口」と書いてある入口をついにくぐって骸骨館の中へ……。ぷうんとかびくさい。中は月光が乱反射《らんはんしゃ》で入って来ているところだけがうすぼんやりと明かるいが、他は洞窟《どうくつ》のようにまっ黒で、何も見えない。骸骨も見えないのだ。
正太の手はすぐ鉦《かね》の在所《ありか》を見つけた。骸骨のあらわれな
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