四番目の廃工場は、それらとはちがって機械類は見えず、中の土間全体が広々としていた。もっともその土間には、少年の背がかくれるほどの丈《たけ》の長い雑草《ざっそう》がおいしげっていて、荒涼《こうりょう》たる光景を呈《てい》していた。
「ここならいいね。この草をすっかり刈っちまうんだよ。そうすれば、ここをホームにしてあっちへ向いてやれば、ベースボールができるよ」
 ブウちゃんは土木技師《どぼくぎし》のように、グラウンドの設計をのべた。
 このときみんなの中で一番年上の清君と一郎君とが話をはじめた。
「ねえ、あれをしようよ、一郎君。あれをするにはおあつらえ向きの場所だよ。ちゃんと舞台もあるしね、ほら、あそこを“地獄《じごく》の一丁目”にするんだ。すごいぜ、きっと……」
「ああ、そういえばいい場所だねえ。舞台の前にはこんなに雑草が生えていて、ほんとうに“地獄の一丁目”らしいじゃないか」
「ね、いいだろう。さっそく準備にとりかかろうや。みんな手わけをして作れば、今夜の間に合うよ。そして胆《きも》だめしの当番は、あそこのくぐり戸からこっちへ入るんだよ。そして鉦《かね》をかんかんと叩《たた》かせ、それ
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