たって厳重《げんじゅう》な捜査《そうさ》が行われた。だが、やっぱり見つからずじまいであった。終戦直後はみんなが生ける屍《かばね》のように虚脱状態《きょだつじょうたい》にあったので、ほんとうにうっかり処分されてしまったのかも知れなかった。とにかく今もその謎は解《と》けないままに残されている。
作者《わたくし》は、百号ダイヤのことについて、あまりおしゃべりをすごし、かんじんの清君たちの話から脱線《だっせん》してしまったようだ。では、章をあらためて述べることにしよう。
胆《きも》だめし
少年たちは柵《さく》の破れ目から、廃工場のある構内《こうない》へ入っていった。一番手前の工場からはじめて次々に工場の内部をのぞいていった。どの工場も、窓ガラスが破《わ》れているので、そこからのぞきこめばよかった。破れ穴が高いときには少年の一人が他の少年に肩車《かたぐるま》すればよかった。
一番目から三番目までの工場は、いずれも中でベースボールをするには向かなかった。そのわけは、工作機械がさびたまま転がっていたり、天井からベルトが蔓草《つるぐさ》のようにたれ下っていたりしたからである。しかし
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