ぬ》りのようなかんばしくない事件がおこった。それはこの工場に隠匿物資《いんとくぶっし》があるはずだとて、大がかりな家《や》さがしが行われたのである。その結果、一部のものは発見されたが、その捜査の第一番の目あてであったダイヤモンド入りの箱は、ついにさがしあてることができなかった。その宝石箱《ほうせきばこ》には、この工場で使うダイヤモンド・ダイスといって、細い針金つくりの工具をこしらえるその資材として総額五百万円ばかりの大小かずかずのダイヤモンドが入っているはずで、中にも百号と番号札をつけられたものは三十数カラットもあるずばぬけて大きいダイヤモンドで、これ一箇だけでも時価《じか》百五十万円はするといわれていた(このダイヤは、ある尊《とうと》い仏像《ぶつぞう》からはずした物だといううわさもあった)。なぜこのダイヤの箱が見あたらないのか。あまり大きくもない箱だから他の品物とまぎれて焼き捨てられたのかも知れず、あるいはひょっとするといつの間にか盗難にかかったのかもしれないということだった。だがそれほどの貴重《きちょう》なものを、わからなくしてしまうというのは、おかしいというので、工場は何回にもわ
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