ネキン人形のような白々《しらじら》しさにかえって、彼を階上の部屋へ案内した。
「では、どうぞ。防空壕は、第二階段をお下りください。窓の遮蔽《しゃへい》は、おさわりになりませんように。失礼いたしました」
「君の部屋の電話番号は……」
「構内四百六十九番です。しかしあたくしはたいてい外を廻っておりますので、不在勝《ふざいが》ちでございます」
「明朝《みょうちょう》、きっと、ですよ」
仏《フォー》は、アンの手を取ろうとしたが、アンはそれを振り払って、風のように部屋を出ていってしまった。
それから暫《しばら》くして、食事を告げに来た女は、アンではなかった。それっきり、アンの姿は、仏の目にとまらなかった。
仏は、自室に戻ったが、落着いていられなかった。アーガス博士が帰って来たという知らせは、いつまで経っても、かかって来なかった。彼は仕方なく、寝床に入ることに決めた。彼は、いつもよりは多量の睡眠剤をとることによって、希望の朝をすこしでも早く迎える用意をした。
寝床に入ると、彼は、すぐ電灯のスイッチをひねった。彼は、間もなく、泥のような眠りに落ちていった。
17
午前三時
前へ
次へ
全83ページ中72ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング