英本土上陸作戦の前夜
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)英蘭《イングランド》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)中国人|仏天青《フォー・テンチン》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)わし[#「わし」に傍点]
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英蘭《イングランド》西岸の名港《めいこう》リバプールの北郊《ほっこう》に、ブルートという町がある。
このブルートには、監獄《かんごく》があった。
或朝、この監獄の表門が、ぎしぎしと左右に開かれ、中から頭に包帯《ほうたい》した一人の東洋人らしい男が送り出された。
彼に随《つ》いて、この門まで足を運んだ背の高い看守《かんしゅ》が、釈放囚《しゃくほうしゅう》の肩をぽんと叩き、
「じゃあミスター・F。気をつけていくがいい。娑婆《しゃば》じゃ、いくら空襲警報が鳴ろうと、これまでのように、君を地下防空室《ちかぼうくうしつ》へ連れこんでくれるわし[#「わし」に傍点]のような世話役はついていないのだからよく考えて、自分の躯《からだ》をまもることだ」
「……」
「おう、それから、
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