? ネラは、門衛から、仏の鞄《かばん》を受取った。
「どうぞ、こちらへ……」
仏は、ネラと呼ばれる女と、藍色《あいいろ》ようやく濃い研究所の庭を、砂利をふみつつ、奥の方へ歩いていった。
「アン」
「はい」
「君は……いや、もうなにもいうまい」
仏天青を迎えに出たネラは、アンであったのである。彼のふしぎな妻であったのである。
「あたくし、愕きました。どうなさいます、あなたは……。復仇《ふっきゅう》をなさいますか?」
「……」
仏は、嵐のような激情《げきじょう》の中に、やっと躯を支《ささ》えていた。それが、せい一杯だった。
「なぜ、御返事がありませんの」
「アン、お前は、ここで何をしているのか」
「あなた。この前のように、あたくしを愛していてくださいません?」
アンは、別なことをいった。
「……もし、愛していたら……」
仏は、やっとそれだけいった。
「ああ、あたくしを愛していてくださるんですね、お叱《しか》りもなく……。一生のお願いがありますわ。聞いてくださる?」
「……聞かないとはいわない」
「ほほ、消極的な御返事ね。お願いしたいというのは……どうか明朝まで、あたくしがここにい
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