|重慶《じゅうけい》は、昨夜、また日本空軍のため、猛爆をうけた。損害は重大である。火災は、まだ已《や》まない。これまでの日本空軍の爆撃により市街の三分の二は壊滅《かいめつ》し、完全なる焦土《しょうど》と化《か》した。しかも、蒋委員長は、あくまで重慶に踏み留《とど》まって抗戦する決意を披瀝《ひれき》した”
日本が中国を攻撃している! あの小さい日本が、大きな中国を攻撃しているのだ。なんというおかしなことであろう。一体、中国の空軍は、なにをしているのであろう。中国の空軍の活躍については、生憎《あいにく》ニュースがなかったのか、なにも記載《きさい》がなかった。
「日本軍は、敵ながら、なかなか天晴《あっぱれ》なものだ」
仏天青は、ひどく日本軍の勇敢さに、ひき入れられた。敵国が好きになるとは、困ったことであった。
彼は、新聞紙を、また折りかえして、次なる頁《ページ》に目をやった。
「おや、こんなところに、アンダーラインしてあるぞ」
今まで気がつかなかったが、下欄《げらん》の小さい活字のところが、数行に亙《わた》って、黒い鉛筆でアンダーラインしてあった。そこを読むと、こんなことが書いてあっ
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