るって、ああ、これか」
右の肱掛《ひじかけ》の少し上にスイッチがあった。それをひねれというのだ。
僕はスイッチをぽつんと右へひねった。
すると急に頭がじいんと痛くなった。そして胸がむかむかしてきた。これはいかんと思って、ポケットから手巾《ハンカチ》を出そうとすると、これはどういうわけか手に力がはいらない。
(失敗《しま》った……)
と身を起そうとしたが、それも駄目であった。目の前が急に真暗になったと思うと、ぴかぴかと星のようなものが光った。それっきり後のことは憶えていない。
どこをどう引張り廻されたのか知らない。何時間だか、何十時間だか、それとも何日間だか知らないが、とにかく相当時間が経過したあとで、ぼくは気がついた。
僕は温い部屋の長椅子の上に長々と寝ていた。
「おや、ここは一体どこだろう」
僕は長椅子の上に起き上った。頭を振っていると芯《しん》がまだすこし痛む。あたりを見廻す。いやに真四角な部屋だ。正六面体の部屋だ。中の調度は、小さな客間といった感じで、出入口のついている壁を除く他の三方の壁には長椅子が押しつけてあり前に細長い卓子《テーブル》が置いてある。出入口のつい
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