が荒々しくあいて、十名ばかりの艇員がどやどやと踏み込んできた。彼らは顔から胸へ、水の中を潜ってきたような汗をかいていた。
「皆さん、ごめんなさい。艇長の命令によって、卓子《テーブル》と椅子を外して持ち出します」
「えっ、なんだって」
応《こた》える代りに、彼等はスパナーと鉄棒とを使って、床《ゆか》にとりつけてあったナットを外し、卓子をもぎとり、椅子を引きはいだ。
「何をするのかね」
僕は尋ねた。しかし艇員は応《こた》えなかった。口をきくと、行動が鈍くなると思っているらしい。それほど彼らは忙《いそ》いでいた。そして扉を開くと、それを担《かつ》いでどんどん外へ搬び出した。僕たちは只《ただ》目を瞠《みは》るばかりだった。
そのとき、戸棚の中から、魚戸の声がとびだした。その声は、腸《はらわた》を絞《しぼ》るような響きを持っていた。
「おい、岸はいないか。いたら、すぐ展望室へ来い。艇の外に、すさまじい光景が見える。本艇は宇宙墓地のすぐ傍に近づいたのだ。早く来い。これを見なければ……」
とまでいったが、そのあとはどうしたものか、声が消えてしまった。
僕は、魚戸の声に、元気をとり直した。そ
前へ
次へ
全78ページ中57ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング