して同室の二人を促《うなが》して、ふたたび展望室へ駈けあがっていったのである。


   難航


 展望室には、魚戸がいるだけだった。
 ミミの姿も見えなかったし、その夫たるベラン氏も見えなかった。
 魚戸は、僕たちの駈けあがってきたのを見ると、きつい顔付のまま満足げに肯《うなず》いて、窓の外を指し、
「いま、本艇は大作業を始めている。この作業が成功しなかったら、本艇はわれわれを乗せたまま、永遠に宇宙墓地の墓石となり果てるのだ」
 と、演説しているような口調でいった。
「もっと詳《くわ》しく説明してくれ」
 僕は魚戸の腕を抱えて、ゆすぶった。
「あれを見ろ」と魚戸は僕の身体を前方へ引摺《ひきず》るようにして、斜め上方を指し「探照灯は本艇が出しているのだが、あの青白い光の中に黒い小山のようなものが並んでしずかに動いているのが見えるだろう。おい見えるか、見えないか」
「うん、見える、見える」
 僕はようやく魚戸の指すものを探し当てた。ふしぎな島の行列だった。暗黒の宇宙に、なぜこのような多島群《たとうぐん》があるのであろうか。
「見えたか。おい岸。あれを何だと思う」
「何だかなあ」
「あれ
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