いだろう。だから、ぜひとも人工重力装置が入用なわけだ」
 魚戸は、新知識を僕に植えつけてくれた。聞けば聞くほど、本艇には面倒な仕掛が要《い》るのに一驚《いっきょう》した。それと共に、僕はこれまでにはそれほど深い興味を持っていなかった本艇の科学に対し新なる情熱が湧いてくるのを感じた。
 このつぎリーマン博士に会見のときは、そういう問題について質問の矢を放ってみたいと思ったことである。


   宇宙の墓地


 地球の上のことを引合いに出していうなら、ちょうど冬になってビルディングの中にスチームが通りだすのと同じように、本艇の中には人工重力の場が掛けられ始めた。
 魚戸の話によると、まだほんの僅かの人工重力しか掛っていないそうだが、それでもその効果は大したもので、滑ってころんだり卓上のものが動きだしたり、栓をするのを忘れたインキ壺《つぼ》からとびだした雲状のインキが出会い頭《がしら》に顔をインキだらけにするようなことは全くなくなった。大した力である。地球の上では、これまでに誰も重力の恩なんて考えた者はあるまいが、僕は今になって重力の恩に気がついた。
 或る日、僕たちが倶楽部で朝食を摂《と
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