のねえ。貴方に相手をしていただこうかしら」
「いやいや、それは真平《まっぴら》です」
ベラン氏が、僕の方をじろりと見たが、僕の目と会うと、周章《あわ》てて目を本の上に落とした。
それがきっかけとなり、ミミは僕をつかまえて、輪投げを挑《いど》んでしかたがなかった。結局、すこし狭いけれど、倶楽部の部屋を斜めに使って、輪投げ場をこしらえた。
最初はミミと僕だけがそれを楽しんだが、間もなくフランケやワグナーや、はては魚戸までも参加するようになった。
それが機会となって、魚戸と僕は再び地球の上での交際をとり戻した。
或る日、めずらしく宣伝長のイレネが、倶楽部に顔を出した。その手には、書翰綴《しょかんつづり》をもっていた。
「みなさん。出発以来、集って来たニュースの中から、本艇の行動に関係あるものを読みあげますから、聞いていただきます」
そういってイレネは、部屋の真中に立ったが、足許に輪投げの輪が落ちていたのにつまずいて、もうすこしで足首をねじるところだった。
「誰がこんなものをここに持ち込んだのでしょう。こういうことはあたしの許可がいりますわ」
イレネは不愉快な顔をした。
ミミが
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