ら》いだした。妙なことである。
「ミミよ。お前にちょっと話がある。部屋へ一緒にいってくれ」
 まだ諦められないらしく、ベランは愛妻ミミ女史を引立てるようにして、倶楽部を出ていった。あとでは爆笑が起った。
 爆笑の余韻が消えてしまってから、僕は一座を見廻したあとで、仲間のうちでの最強者と思われるフランケに顔を向け直した。
「ねえ、フランケ。君はリーマン博士のいったことをどの程度に信じているのかね」
「全面的に信じている。僕たちは宇宙尖兵《うちゅうせんぺい》だ。人類最高の任務についていると信じているよ」
 フランケらしい率直な返答だった。
「ふうん、そうかね。ところで君は、さっき、博士の話に出てきたX宇宙族とわれわれとが、どの地点――というか、それともどこの空間といった方がいいかもしれないが、一体どこで彼らと交渉が始まるものと予測しているのかね」
 フランケなら、きっと既に考えていると思ったので、僕はそれを訊《き》いた。フランケは両手を揉《も》みながら、一旦口をへの字に曲げて、
「火星においてだろうね」
 といったが、そういった後で、彼は自分の亢奮《こうふん》してくるのを殊更《ことさら》に
前へ 次へ
全78ページ中31ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング