、警告するのだ。それで聴かれなければ、僕たちはこの旅行から脱退する」
「ちょいとベラン氏。あたしは脱退を決定したわけじゃありませんから、へんなこと言いっこなしよ」
ベラン夫人ミミが、横から抗議した。それを聞いてベラン氏はまた一層|赭《あか》くなって、
「愛するミミよ。間違った信念を持つ艇長に、僕たちの尊い青春を形なしにされてしまうなんて莫迦莫迦《ばかばか》しいじゃないか。今のうちなら、地球へ戻ってくれといえば、艇長も承知してくれるよ」
「今更地球へ戻ってから又出直すなんて、そんなことは出来ませんよ。あの艇長が、かねて決定しておいた航程を貴方ひとりのために変更することはあり得ませんよ」
「そんなわからん話はない。とにかく僕は掛合《かけあ》わないじゃいられない」
「ねえベラン氏、みっともないことは、もうよしたらどう。それに今更地球へ戻ってみても、あたしたちは高利貸と執達吏とに追駆《おいか》けられるばかりよ」
ミミに痛いところを突込まれ、ベランは茹《ゆ》で蛸《だこ》のようになって、只《ただ》呻《うな》るばかりだった。
僕が青春問題を片附けたと思ったら、こんどはベランが青春問題に煩《わず
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